若手法律専門家が知っておきたい!RPAによる定型業務自動化活用術
法律専門家の業務効率化におけるRPAの可能性
日々の業務において、登記情報の取得・整理、特定のウェブサイトからの情報収集、書類のフォルダ分けなど、定型的かつ反復的な作業に多くの時間を費やしていると感じる若手法律専門家や法務担当者は少なくないでしょう。これらの作業は重要である一方で、高度な判断を必要としないため、コア業務に集中する上でのボトルネックとなることがあります。
このような定型業務の効率化・自動化を実現する技術として、近年注目されているのがRPA(Robotic Process Automation)です。RPAは、ソフトウェアロボットがPC上での操作を自動で行う仕組みであり、法律事務所や法務部門においてもその活用が期待されています。
この記事では、若手法律専門家がRPAを理解し、日々の業務にどのように活用できるのか、その可能性と導入のポイントについて解説します。
RPAとは何か?法律業務への関連性
RPAは、PC上で行う定型的な操作(クリック、キーボード入力、データのコピー&ペースト、アプリケーションの起動・操作など)を、事前に設定されたシナリオに従って自動で実行するソフトウェア技術です。人間がPCで行う作業を、ロボットが代行するイメージです。
法律業務においては、以下のような定型的なPC作業が多く存在します。
- 特定のウェブサイト(裁判所、登記所、官報など)からの情報取得
- 複数のシステムやファイル間のデータ転記・入力
- 定型的なメールの作成・送信
- 書類のファイル名変更や指定フォルダへの保存・整理
- 請求書や領収書データの集計・突合
これらの作業は、正確性が求められる反面、時間と労力がかかります。RPAを活用することで、これらの定型作業を自動化し、人的ミスを減らしながら大幅な時間短縮を図ることが期待できます。
法律業務におけるRPAの具体的な活用例
法律事務所や企業の法務部門でRPAが活用されうる具体的なシーンをいくつかご紹介します。
1. 登記情報の取得と整理
不動産登記情報や商業登記情報など、特定の情報を登記情報提供サービスなどから定期的に取得し、内容を確認してファイルに保存したり、台帳に転記したりする作業は定型的です。RPAを活用すれば、指定されたリストに基づき、自動で情報取得サイトにアクセスし、必要な情報をダウンロード・保存・整理するといった一連の作業を自動化できます。
2. 裁判関連情報の収集
裁判所のウェブサイトで公開されている判例や訴訟の進捗状況など、特定の情報を定期的に確認・収集する作業も自動化の対象となります。RPAにより、指定された条件で検索を実行し、結果をファイルに保存したり、関係者に通知したりすることが可能です。
3. 顧客情報や事件情報の入力・転記
顧客管理システムや事件管理システムへの基本情報の入力、あるいは異なるシステム間でのデータ転記作業は、正確性が求められる繰り返し作業です。RPAを利用すれば、入力元データ(例えばExcelリストなど)から情報を読み取り、システム上の指定項目に自動で入力することができます。
4. 書類の整理・ファイリング
スキャンした書類のファイル名を特定のルールに基づき変更したり、内容に応じて指定されたフォルダに自動で振り分けたりする作業もRPAで効率化できます。これにより、手作業による整理漏れや誤配置を防ぎ、検索性を向上させることが期待できます。
RPA導入を検討する際のポイント
RPAの導入を検討するにあたり、いくつかの重要なポイントがあります。
1. 自動化に適した業務の選定
RPAは全ての業務を自動化できるわけではありません。自動化に適しているのは、以下の特徴を持つ定型業務です。
- 繰り返し頻度が高い: 日次、週次などで繰り返し発生する作業ほど効果が出やすいです。
- ルールが明確: 作業手順が標準化されており、例外処理が少ない業務。
- 入力・出力が構造化されている: 扱うデータがExcel、CSV、構造化されたウェブサイト情報など、ロボットが認識しやすい形式であること。
まずは自事務所や法務部門の業務を棚卸し、どの業務がこれらの条件に当てはまるかを洗い出すことから始めるのが良いでしょう。
2. ツール選定とコスト
RPAツールには様々な種類があり、機能や価格体系が異なります。デスクトップ上で個人の作業を自動化するタイプから、サーバー上で複数のロボットを管理し、組織全体の業務を自動化するエンタープライズ向けまで様々です。
多くのRPAツールでは無料トライアルを提供しています。まずは少数の定型業務でトライアルを利用し、ツールの操作性や効果を試してみることをお勧めします。導入費用だけでなく、運用・保守にかかるコストも考慮に入れる必要があります。
3. セキュリティと情報管理
法律業務で扱う情報は機密性が高いものが多いです。RPAを導入する際は、アクセス権限管理、データの暗号化、操作ログの記録など、情報セキュリティに関する対策がしっかりと講じられているツールを選択し、適切な運用体制を構築することが不可欠です。
4. 専門知識の要否と学習リソース
RPAツールの多くは、プログラミングの専門知識がなくても、視覚的なインターフェースで操作シナリオを作成できるよう設計されています(ノーコード/ローコードツール)。しかし、効果的に活用するためには、ツールの操作方法や基本的なロジックを理解するための学習は必要です。ベンダーが提供する研修プログラムやオンラインリソースの活用を検討すると良いでしょう。
RPA導入の注意点
RPAは強力なツールですが、万能ではありません。導入にあたっては以下の点に注意が必要です。
- 柔軟性の限界: 業務フローが頻繁に変更される場合や、非定型的な判断が必要な業務には不向きです。
- 初期設定とメンテナンス: シナリオ作成には一定の手間がかかり、システム変更などがあった場合にはシナリオの修正が必要となります。
- 過度な期待: RPAはあくまで自動化ツールであり、業務そのものの見直しや改善は別途行う必要があります。
まとめ
RPAは、若手法律専門家が直面しやすい定型的・反復的なPC作業を自動化し、業務効率を大幅に向上させる可能性を秘めたツールです。登記情報収集、裁判関連情報収集、データ入力・転記、書類整理など、具体的な活用シーンは多岐にわたります。
導入にあたっては、自事務所の業務の中から自動化に適した定型作業を見つけ出し、無料トライアルなどを活用してツールの操作性や効果を試してみることから始めるのが現実的です。セキュリティ対策や運用体制の構築も重要な検討事項となります。
RPAを賢く活用することで、時間のかかる定型業務から解放され、より専門的で付加価値の高いコア業務や、顧客への質の高いサービス提供に集中できるようになることが期待されます。まずは小さな一歩として、RPAの可能性について情報収集を進めてみてはいかがでしょうか。